不妊外来で行われている治療 |
①治療は現疾患に対する治療→②タイミング両方→③人工授精→④体外受精→⑤顕微授精とステップアップしていきます。 |
①現疾患に対する治療 |
●排卵障害→排卵誘発剤、HMG
●卵管通過障害→通水治療、卵管鏡下卵管形成術(FT)
●卵管周囲癒着→剥離手術
●多嚢胞性卵巣症候群(排卵障害の一つ)卵ができ過ぎてしまい突出してうまく育たずに排卵しない障害→排卵誘発剤、HMG・FSHの注射
●高プロラクチン血症→外科的手術、ドパミン作動薬
●性感染症→薬
●子宮内膜症→GnRHアゴニスト、外科的治療
●卵巣嚢腫→外科的治療
●子宮筋腫→GnRHアナログ(長期使用不可)、外科的手術 |
②タイミング療法 |
医学的な観点から予測精度を高めた排卵日を指導して、自然妊娠の受精・着床の確率を高めます。
自然周期でのタイミング法と排卵誘発剤を使ってのタイミング法の2通りがあります。
一般不妊検査で特に異常が見られないご夫婦に適用されることが多いですが、年齢によっては他の治療を並行して行うこともあります。 |
③人工授精(AIH) |
排卵日に合わせて精子を子宮に入れる方法です。
ほとんどの精子は射精後、卵管までたどりつけませんが、精子を子宮の奥まで人工的に入れることで到達し易くする治療法です。
排卵誘発剤やHCGを使用する方法と、自然周期のままで行う方法があります。
統計的には7~8回目以降はなかなか妊娠することが難しくなります。
(3~4日前)排卵日の予測と人工授精の決定
(当日)精液摂取、精液の調整、人工授精
(2日後)排卵後チェック→黄体ホルモン補充
(14日後)妊娠判定もしくは次回の月経の有無で判定 |
④体外受精(IVH) |
精子と卵子を身体の外に取り出して、シャーレの中で混ぜて受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻します。
多くの場合、採卵数を増やすために排卵誘発剤を用います。
胚移植については後述します。
卵巣刺激(排卵誘発)→採卵・採精→体外受精→胚培養→*胚移植→黄体ホルモン補充→妊娠判定。 |
⑤顕微授精(ICSI) |
1個の卵子に1個の精子を注入します。
卵子と精子を身体の外に取り出して、元気な精子の中から1個を吸引し、卵子の細胞質内に注入して受精させ、その後発育した受精卵(胚)を子宮に戻すものです。
他はIVHと同じです。
重度の乏精子症や精子無力症、卵子の透明帯が硬い、また精子・卵子ともに正常であっても体外受精で受精しない場合に行う治療法です。
*胚移植には複数の方法があります。
● 分割期胚移植
受精後2~3日の分割期胚を移植する方法で、古くから行われています。
● 胚盤胞胚移植
受精卵を5~6日培養し「胚盤胞」と呼ばれる着床寸前の胚を移植する方法です。
妊娠率は分割期胚移植より高いといわれています。
●2段階胚移植
分割期胚と胚盤胞を同じ周期で連続して移植する方法です。
最初の移植胚が子宮内膜を刺激し、次に移植する胚盤胞の着床率を改善する効果があるとされています。
ただし、双子などの多胎児妊娠の確率が高まります。
● シート法
2段階胚移植法が進化した方法。
具体的には、採卵後、体外受精または顕微授精を実施した後、5日間胚を培養して、胚盤胞と胚盤胞が入った培養液を別々に凍結します。
*凍結胚盤胞移植を実施する周期に、胚移植の2日前に胚盤胞が入っていた培養液のみを子宮内に注入します。
胚盤胞から分泌された因子によって子宮内膜が着床しやすい内膜に変わると考えられています。
*凍結融解胚移植
受精卵(胚)を凍結保存し、融解後胚移植する方法です。
子宮の着床できる時期は限られており、その時に良好な胚を移植しなければ着床しづらく妊娠が成立しないとされています。
凍結融解胚移植は、その期間をきちんと考慮し移植を行うため妊娠率が向上するとされ、現在日本では盛んに行われています。
受精卵(胚)の凍結保存は、胚移植以外に複数の良好胚が育った場合や、妊娠成立による副作用(OHSS)の重症化予防、妊娠率の向上など、その目的はいくつかあります。
凍結することによる受精卵(胚)へのダメージをわずかながら認める場合もありますが、次の治療では卵巣刺激から胚培養までのステップを行わずに胚移植ができるため、身体的にも経済的にも負担が軽減され、有益な方法といえます。 |